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判決の効果とその影響

In 記事
6月 11, 2024

今後の課題

 マリン開発及び市漁協が行ったあらゆる行為は、上記の一連の裁判手続きで、その妥当性が全面的に否定されました。
 このことは、税という公的な資金で成り立っているフィッシャリーナ、そしてその経営母体であるマリン開発の問題点をあぶり出し、ひいては、鴨川の振興、発展に多くの課題を投げかけていると言えます。

二重契約による損失発生

 まず、令和3年以降のフィッシャリーナの運営に関する業務委託契約が二重契約になっている問題について解説します。
 マリン開発は令和3年3月にKGMに対して業務委託契約の解除通知をした後、同年4月1日に市漁協と業務委託契約を結びましたが、今回の判決確定により、KGMとの契約が有効に継続しているという判断がなされました。
 その結果、マリン開発は令和3年4月1日以降は市漁協とKGMのどちらとも契約関係にあり、二重の委託料の支払義務が発生したことが明らかになりました。
 一方、マリン開発の収入は、マリーナの運営に必須の「水面占用許可」の手続きに不備があったため、令和5年度は10ヶ月に及ぶ係船料収入がありませんでした。
 二重契約による不要な支出、手続き不備による収入減をどのように手当するのか、マリン開発の経営上大きな問題が生ずるものと思われます。
 先に述べたように、マリン開発は鴨川市が51%、市漁協が49%を出資した、いわゆる第三セクターです。既に出資金として市民の税が投入されている公的な存在でもあります。
 損失に対してどのように対処するのか、市財政からの補填という事態はあってはなりません。今後の経営方針も含め、早急に対策を講ずる必要があります。
 また、客観的に見てもこの損失の原因と今後の資金確保については、その責任の所在と具体策を明確にすべきであると考えます。
 また、市漁協でも役員会を経た上でマリン開発と委託契約を締結したはずです。
 売り上げの85%が市漁協に対する委託料との報道がありましたが、KGMはクラブハウス及び係留施設など、全ての設備投資を行った上に、係船料を安価に設定するためにマリン開発に対しては利益分の支払いを求めず、かつ、マリン開発の赤字を防ぐ仕組みを取り入れた結果、委託料を売上げの99%に設定しました。
 市漁協との契約金が売り上げの85%の根拠はどのようなことであったか公に説明も必要です。
 そのような中、市漁協でも事務所設置等の諸経費はかかっており、人件費も2年以上支出しています。それらの契約金額はマリン開発として支払う義務があり、市漁協としても決算上は一般的には未収金の処理がなされているのではないかと思われます。
 市漁協において役員会ではどのような処理をされるかも、マリン開発あるいは鴨川市としての責任もあるかと思います。

マリン開発の資金管理上の課題

 業務委託契約の有効性を争ったKGMとマリン開発の間の「委託料請求事件」では、第一審でKGMの主張が全面的に認められ、判決確定前でも強制執行が可能になる仮執行宣言も付されました。
 併せて、2000万円の供託をすることにより、強制執行を免れることができることも言い渡されました。しかしながら、マリン開発は遅滞なく期間内に供託をせず、KGMによる強制執行という事態に至りました。
 令和6年3月の鴨川市議会定例会でこの点を問われた市執行部は「供託の準備を進めていたが、手続き前に差し押さえられたため、手続きをとることができなかった。」と答弁しています。
 しかしながら、判決が言い渡されたのは令和5年10月19日、マリン開発に差押命令が送達されたのが11月13日です。また、控訴期間が2週間であることなども考慮すと手続きをとることができなかったという説明は説得力に欠けると言わざるを得ません。
 更に、この間のマリン開発の金融機関における預金残高についても不自然な資金の移動状況が明らかになりました。
 11月13日にマリン開発取引先金融機関に対して送達された差押え命令の金額は約2900万円でした。その際に回収できた債権総額は1600万円であり、その時点で既に1300万円が回収できない状態でした。
 やむを得ず、第2回目の差押え命令を申し立てたところ、その命令が送達された時点のマリン開発の預金残高が1万500円であるという事実が判明しました。
 マリン開発の令和2年3月31日の決算報告では、現金及び預金が「約4328万円」と記載されていることを考えると不自然な預金管理と言えるのではないでしょうか。
 この状況が該当するかどうかを断定することはできませんが、強制執行を逃れるための財産隠匿行為は刑法第96条の2に規定する「強制執行妨害目的財産損壊等罪」として断罪されます。
 また、マリン開発は鴨川市が51%の出資をしている第三セクターであり、その資金管理についても公に準ずる説明責任が伴います。不安定な運用、不適切な運用、危険な現金管理などがあってはなりません。
 預金及び現金の保管状況について、市民そして市議会に対して、具体的な情報を開示することで、適切な資金管理を行っていることを証明すべきであると考えます。