一部利用者の提訴から始まった騒動
今日までのフィッシャリーナをめぐる一連の民事紛争は、フィッシャリーナの一部利用者が、マリン開発とKGMを訴えたことから始まりました。令和2年5月にフィッシャリーナの一部利用者が原告となり、「契約内容が納得できない、管理体制が悪い」などと主張し、マリン開発とKGMの2社に対して千葉地方裁判所に民事訴訟が提起されました。
全国のマリーナでも利用者側と運営側との問題が取り上げられ、鴨川でも何よりも海の安全を確保するために、両者の健全な関係性を保つための対応が必要でした。
フィッシャリーナでもマリーナや法律の専門家の助言により、管理体制を整えるべく契約内容の精査を進めていた時期です。
その後、裁判の中でマリン開発とKGMの主張が認められる形勢になった矢先、松本ぬい子市漁協組合長が、当時のマリン開発代表取締役であった副市長を解任し、本人がマリン開発代表取締役に就任しました。直後、同じ被告であるKGMとの調整もなく、マリン開発側に全面的に非があるなどとして、マリン開発は一部の利用者である原告と唐突に単独で裁判上の和解をしました。
同時期、原告側代表から、マリン開発に対して、フィッシャリーナを買い取り、自ら運営したいとの要望が出されています。
市民の皆様の税金を投入して成り立っている公的な施設でもあり、このようなことができるはずがありません。マリン開発が訴えた側に有利な内容の裁判上の和解という行動をとった意図には大きな疑問が残るところです。
なお、マリン開発との和解後もKGMと一部利用者との訴訟は継続しましたが、第一審の千葉地方裁判所において、令4年3月にKGM側の全面勝訴となりました。 その後、2名の利用者は東京高等裁判所に控訴しましたが、最終的に東京高等裁判所でKGMの全面勝訴の判決が下されています。
市長交代とマリン開発経営陣交代 突然の契約解除通知
前述のとおり、平成16年開設当初に鴨川市から懇願され、多大なリスクを背負った形で運営をまかされたKGMとマリン開発との業務委託契約は、令和3年3月に20年の契約期間が満了しました。
その際、当時のマリン開発経営陣は、今後のフィッシャリーナ運営についてKGMが所有しているクラブハウス及び係留施設の取り扱いなどについて検討の時間が必要と判断し、改めて5年間の延長契約を締結しました。
しかしながら、同年3月15日の長谷川孝夫新市長誕生直後にマリン開発臨時株主総会が開催され、鴨川市にとっても重要な施設であり、かつ、裁判が継続中で役員間での引き継ぎは慎重に行うべきであるにも拘らず、代表取締役である鴨川市副市長はじめ全取締役と監査役の解任を決議しました。
そして、長谷川孝夫鴨川市長と松本ぬい子市漁協組合長の2名の代表取締役就任を含む新たな役員が選任されました。
そして、新体制のマリン開発は、わずか6日後の同年3月29日にKGMに対してで突然の契約解除通知をしました。
KGMが契約の有効性を主張 委託料請求事件 KGM勝訴確定
何の話し合いもなく、一方的かつ唐突な契約解除通知を新聞報道で知ることになったKGMは、令和3年7月にマリン開発を被告として「委託料請求訴訟つまり契約の継続を主張する訴え」を提起しました。
鴨川市からの懇願により、係留施設やクラブハウスなどの投資に踏み切ってから20年の間、地道に築き上げた各方面との関係性を全く無視したマリン開発に対するやむを得ない対抗措置です。
契約解除の理由として上げられたのが、「業務処理が不適切」、「報告業務の不備」の2点。その判断が裁判に委ねられました。
解除理由については、法的に認められるはずがないとの思いでKGMは司法の判断を仰ぐこととしました。結果はKGMの全面勝訴でしたが、市長が代表取締役である公的な性質を持つ第三セクターとしてのマリン開発の判断が適切であったのかを問う訴訟でもありました。
高裁でもKGM全面勝訴 上告はなく判決確定
第一審の判決は令和5年10月19日に千葉地方裁判所木更津支部で言い渡されました。
KGMの主張が全面的に認められた判決の内容は、マリン開発に対し、KGMに未払いの業務委託料約2830万円の支払いを命ずるものでした。また、判決には「KGMは勝訴部分について強制執行をすることができる。ただし、マリン開発がKGMの為に2000万円の担保を供するときは、その仮執行を免れることが出来る」とされておりました。しかしながら、マリン開発は担保の供託はせず、結果として強制執行の手続きが進められることになりました。
その間のマリン開発内部における資金管理については、仮執行逃れが強く疑われる事実、公的な第三セクターとしての適切かつ安全な資金管理について疑義を持たざるを得ない状況があり、詳細は後に記述します。
マリン開発の控訴を受け、裁判は第二審の東京高等裁判所に移りました。令和6年4月24日の同裁判所の判決は、令和3年から令和5年までの委託料などの支払いを命じた第一審判決を支持し、マリン開発の控訴を棄却しました。
その後、最高裁への上告はなく、KGM全面勝訴の判決が確定しました。「業務処理が不適切」、「報告業務の不備」については全くの事実無根であり、業務委託契約は有効とされ、マリン開発がKGMに支払うべき委託料などは約3000万円とされました。
この判決確定により、マリン開発における「KGMと市漁協」に対する二重の業務委託契約による不適切な支出などの問題も明らかにされ、マリン開発は大きな財政負担を背負うことになりました。
今後の経理処理は漁協と相談の上行うと聞いていますが、二重契約の締結に対する責任について、その時点で判断責任者であった松本ぬい子市漁協組合長と長谷川孝夫鴨川市長どのような根拠に基づいて判断されたのか市民及び市議会へ説明すべきであると考えます。
また、公的な性質を有する第三セクターとしての契約判断としても疑問が残るところです。併せて、説明責任を果たすべきです。
市漁協がクラブハウス撤去を要求 建物収去土地明渡請求事件 第一審、第二審KGM勝訴 上告中
KGMがマリン開発に対し業務委託契約の有効性を訴えた訴訟が提起されてから約2ヶ月後、市漁協はKGMがフィッシャリーナに建設したクラブハウス(管理棟)を撤去した上で、市漁協所有土地の返還を求める内容の訴えを提起しました。当該土地は、元々マリン開発の所有であり、フィッシャリーナ建設の際にKGMががマリン開発から賃貸借契約していたもので、これらの事業を熟知して当該土地を買い受けた市漁協からの訴訟という行為は常識的には考えられないことです。
第一審判決は、令和5年2月16日に千葉地方裁判所木更津支部で言い渡されました。市漁協の全面敗訴の判決では、「KGMがクラブハウスを建設したことでフィッシャリーナが開業できた。」との事実を認定し、KGMが建物を所有し、マリン開発と有償の土地の賃貸借契約を結んでいると認められるためKGMには賃借権があると判断し、市漁協の請求を棄却しました。ここでもフィッシャリーナについてのKGMの主張の正当性が認められたところです。
市漁協はこれを不服として控訴しましたが、東京高等裁判所第7民事部水野有子裁判長は、令和6年1月18日、第一審の判決を維持して市漁協の控訴を棄却しました。
なお、市漁協はこの東京高等裁判所の判決を不服として、最高裁判所に上告中です。
ただ、最高裁判所への上告は、判決に憲法の解釈の誤りなどの憲法違反がある場合など、特別な場合に限られており、上告という行為の妥当性についても疑念が生ずるところです。