現状の整理と課題
この事業は、都市住民を対象に農業体験などを提供している地域からの要望に応じてスタートしました。目的は、新しい形での農業と農村を目指し、都市との交流を通じて地域農業の活性化を図ることにあります。
その一環として、総合交流ターミナル「みんなみの里」の整備や大山千枚田の保全が地元の民間関係者の尽力によって進められ、大きな成果を上げています。
「みんなみの里」は「無印良品」と連携し、現在5年目を迎えており、地域の拠点として着実な展開を見せています。
現状においても、日本有数の棚田である大山千枚田が、地域の象徴的な風景として高く評価されています。
地元住民とボランティアの協力による棚田保全活動は、農業の持続可能性を支えると同時に、観光資源としても大きな成功を収めています。
鴨川には大山をはじめとして、川代地区他にも「棚田オーナー制度」を通じて都市住民との交流が生まれ、オーナーが棚田の保全に参加することで、地域に新たなコミュニティが生まれています。
こうした取り組みにより、地域経済の活性化と自然環境の保全が両立し、大山千枚田周辺は観光と農業の融合による持続可能な地域づくりのモデルとなっています。
さらに、無印良品との連携で整備された「みんなみの里」では、地元産品の販売や農業体験イベントが開催され、地域の農業と観光を結びつける拠点として機能しています。
これらの成功事例は、地域全体の活力を高め、持続可能な発展に寄与しています。
新しい方向性の提案
このような大山千枚田周辺での成功を基盤に、次のステップとして、国保病院を中心にプライマリケアのまちづくりを展開することで地域の新たな可能性を引き出せるのではないかと考えます。
改築され、新しくなった鴨川市立国保病院(以下「国保病院」)は、長狭地域における地域住民の安心・安全を支える基幹病院として機能しています。
建て替えを決めたときには、赤字を膨らませ、市の財政を圧迫するだけであるとの反対意見も多くありました。
しかしながら、地域医療を何としても守るという病院の医師をはじめとしたスタッフの強い想いもあり、建設に踏み切りました。
国保病院は地域住民が日常的にアクセスできる、包括的で持続的な医療サービスを提供することを目的とした「地域包括ケアシステム」の構築や、データヘルス改革を通じた住民の健康レベルの維持向上の実践など、これからの公的医療の拠点として、医療費を含む社会保障費の適正化の中心的な役割を担う重要な施設です。
そして何より、24時間明かりがともる病院は、安心な暮らしを守り「小さな拠点」の核となっております。
また、地方部への人の流れを支え、仕事を作り、安心して住むことが出来る地方創生の拠点となりつつあります。
これにより、医療面での安心感を高めると同時に、地域全体の健康を支える基盤を築き、住民の生活の質を向上させていくことが期待されます。
さらに、内陸部・長狭地区にある国保病院は、災害発生時には全市民の医療や長期避難を支える拠点にもなります。
また、医療の拠点としてだけではなく、地域の農業や産業との繋がりを深めることで、地域住民の健康を包括的にサポートする環境を整えることができます。
このように大きな可能性を秘めた地域について、これらの良さをいかに広くアピールし、地域の魅力を発信できるかが重要な課題だと考えています。
この取り組みにより、鴨川市は健康的で安心して暮らせる地域であるというイメージが定着し、移住や定住を希望する人々にとって魅力的な地域になると考えます。