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(特集②) 太海多目的公益用地の再活用

In 2024年9月号, 記事
9月 18, 2024

現状の整理と課題

 太海多目的公益用地の整備は、1987年前後に始まりました。

 1996年には造成工事のための開発許可を取得し、当初は千葉県による南地域コンベンションホールの誘致を目指していました。 その後、早稲田大学、そして2000年には城西国際大学観光学部の誘致が実現し、地域発展の拠点としての役割が期待されました。

 用地取得や造成工事に約80億円が投じられたこの用地は、鴨川市民にとって貴重な財産です。

 しかし、2020年秋に城西国際大学観光学部が突然の撤退を発表し、それ以降、有効な活用策が見出されていないのが現状です。

 市執行部が市議会議員に説明したとされる内容は、「いくつかの案を検討したものの具体的な実現には至らなかった。」という非公式なものであったとのことです。

 検討の詳細やそのプロセスに関する情報は、市議会にも市民にも一切開示されていません。これでは、貴重な市民の財産が密室で決定されていると言わざるを得ません。

 私は、この点が鴨川市政における最大の問題であると考えています。

 変化の激しい時代においては、一部の人間の判断に依存することは危険です。適切に公開された情報を共有し、市民や地域内外の専門家が事実に基づき、しっかりと議論を重ねることが大事です。

 こうした話し合いから生まれる化学変化が、新たなアイデアや解決策をもたらし、問題解決に寄与するのです。

 撤退表明があった2020年、私は鴨川市長として、幾度となく城西国際大学の本部を訪れ、土地返還から校舎などの建物の活用について、当時の大学理事などの有力者と交渉の場を持ちました。

 土地の返還については大学側の理解を得ることができ、返還の協定締結までこぎつけました。

 更に、跡地の利活用ついて、民間レベルでのネットワークを活かし、金融、医療、教育などの関係者とも協議を重ね、現地視察なども行っておりました。

 2021年には、世界中で先進的なホスピタリティーマネジメント教育を展開している団体から跡地利用の提案を受け、また、亀田総合病院、鴨川国保病院などとの連携の可能性を広げる話もありましたが、残念ながら、その後、公的な協議には至りませんでした。

 その後約3年間、難しい課題ではありますが、事態は全く進展していません。その間、どのような取り組みが行われたのかも公表されていません。

 鴨川市にとって、400名を超える学生や教職員の転出は大きな問題です。一刻も早く、80億円を投入した市民の財産を活かす方法を決断すべきです。

新しい方向性の提案

 城西国際大学観光学部が撤退したとはいえ、約80億円を投じて整備した太海多目的公益用地の再活用は、地域の発展にとって極めて重要な課題です。

 しかしながら、このような状況を打開することは簡単ではないのが現実です。複雑な利害関係や関係性が立ちはだかっていると思われます。

 複雑な課題こそ、多くの人々の視点を取り入れることが重要ではないかと考えます。多くの視点での情報や知恵、アイデアを出し合う仕組みが極めて重要です。

 鴨川市には、小湊さとうみ学校でこのような取り組みの経験があります。

 2018年に開催された「小湊地域の活性化と学校跡地を考える100人会議」がその事例です。

 明確な理由もないまま反対する市議会関係者もいましたが、そこでは、多くの住民がお互いの思いを語り合い、学校跡地の活用策を考えることで、地域住民にとっても納得できる解決策を見出すことができました。

 2022年2月にオープンした「小湊さとうみ学校」は、ウエルネススポーツ鴨川が指定管理者となり、学び、集まり、見つける、をコンセプトに、フットサルコート、空調完備の体育館、文化交流室、食堂、大浴場、宿泊施設など充実した設備の運営をしています。

 施設は、地域の方々が集まる場になっており、定期的に様々なイベントも開催されています。先日も、さとうみ盆おどりが開催され、多くの住民が集う機会となりました。

 学校跡地を考えるスタート段階から地域住民が参画することが、その後の有効活用に大きく寄与している実例だと実感しました。

 前述しましたが、太海多目的公益用地の再活用においても、同じように、市民や専門家、さらには市外の利害関係者を含めた広範な意見交換の場を設けることが打開策の第一歩になるのではないでしょうか。

 また、地域内外の民間レベルのネットワークも活用し、さまざまな分野の専門家や企業との協力を強化することで、新たなビジネスやプロジェクトの創出を目指すことも重要です。特に、観光、農漁業、教育、医療など、地域の強みを生かした分野での再活用が検討されるべきでしょう。

 これらの取り組みを通じて、太海多目的公益用地が地域の発展に資する新たな拠点として再生されることで、鴨川市全体の活性化に貢献することが期待されます。

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