現状の整理と課題
1989年、鴨川市と鴨川市漁業協同組合(以下「市漁協」)の出資により鴨川マリン開発(以下「マリン開発」)が設立されました。これが「フィッシャリーナ鴨川」のスタートです。
しかしながら、当初、マリン開発は経営が非常に厳しく、破綻寸前の状態でした。
2001年に有限会社ケイジーエム(以下「KGM」)が参画してから、経営は安定し、その後20年間安定した経営体制でサービスを提供していました。
しかし、2021年にマリン開発は、KGMに対して唐突な契約解除通告を行い、さらにKGM所有のクラブハウス「海太郎」の撤去と土地の明渡しを求める訴訟を提起しました。
これに対し、KGMは契約の有効性を主張して訴訟を提起するとともに、土地明渡請求訴訟にも応訴しました。
全て決着したのは、本年7月。 KGM側の全面勝訴、マリン開発と市漁協側の全面敗訴で結審しました。
3年間に及ぶマリン開発と市漁協の迷走は、地域の貴重な財産であるフィッシャリーナ鴨川のイメージダウンを招き、鴨川の海全体のイメージにも悪影響を及ぼしました。
その一方で、昨年には、近隣にKamogawa SEASIDE BASEがオープンするなど、周辺地域は活況を呈しつつあります。
また、フィッシャリーナ鴨川に設置されているクラブハウス「海太郎」は、公的に認められた「海の駅」でもあります。
海の玄関口として、また、陸から海への玄関口として全国展開を目指すことが可能であり、海の駅の全国組織である「海の駅ネットワーク」とタッグを組み、全国規模でのPR活動を進めております。
また、ギャラリーの併設やキャンピングカー駐車スペース、電気自動車充電設備なども備え、新規契約者も増加傾向です。
このように、マリン開発が迷走している間も、民間ベースでは新たな展開が進んでいます。実質的に経営破綻の状態であるマリン開発をどう再建するかは、筆頭株主である鴨川市の責務です。一日も早い決断を望むところです。
新しい方向性の提案
法的な判断が下された今こそ、未来へののステップとして、海に開かれた鴨川のイメージを高めるため、市民会館跡地の活用が進む前原海岸周辺の開発や、鴨川シーワールドまで続く松林の「健康保安林」としての活用などと一体となったフィッシャリーナ鴨川の活用に注力すべきだと考えています。
そのためにまず必要なのは、多方面に影響力の強い「第三セクター・㈱鴨川マリン開発」における運営体制の正常化です。
一連の法的結論を踏まえ、公正で開かれた運営体制が必須です。
それを基本にし、更なる活性化を図るためには、フィッシャリーナ鴨川単体での事業展開にとどまらず、周辺との連携強化により、鴨川の海の魅力を高めることが求められます。
Kamogawa SEASIDE BASEとの一体的な展開は、フィッシャリーナ鴨川周辺の魅力を高める大きな可能性をもたらします。
また、現在、民間事業者によりフィッシャリーナ鴨川から市民会館跡地までのプロムナードにてマルシェの企画もあり、地域全体での海の魅力発信につながります。
そして、海浜一体に立地している鴨川館や鴨川グランドホテルなどの宿泊施設、鴨川シーワールドなどと連携し、周辺エリアを一体的に活用して、地域全体の魅力を向上させることが可能です。
中でも、鴨川市の観光におけるシンボルとなっている鴨川シーワールドに対しては、鴨川市として単にその恩恵を享受することだけではなく、市をあげて応援する姿勢が大切です。
施設周辺の美しい松林を松枯れなどから守るための防風林としての整備に加えて、心安らぐ健康保安林として再生させることは、自然の豊かさを背景にした健康志向の観光エリアとしてシーワールドを訪れる来訪者にリフレッシュや癒しを提供し、シーワールドの魅力アップの応援につながります。
それが、鴨川市の新たな観光の魅力創造につながります。
さらに、海岸線につらなる亀田総合病院との医療分野における連携もこの地域の魅力を高める大きな要素になります。
健康をテーマにした展開を進めることで、鴨川市全体の健康を支える基盤としての位置づけを有する地域としても注目されることになると期待されます。